第32章 裸祭り ー角都、飛段ー
「今後の参考?」
「今後の参考だ」
「じゃあ今後の参考に聞くけどよ。この褌凍死祭りは何ぼのバイトよ?」
「お前にしてはいい質問だ。さあ行くぞ」
「いや待てじじィ。何ぼだって聞いてんだよゴラ」
「…一人当たり白菜十玉と餅一升だ」
「え?まさかの現物支給?」
「野菜高騰の折、白菜二十玉は文字通り神の恵みだ」
「ちょ、ちょっと待て。こんな寒ィ思いした上白菜二十個に餅担いで帰れっての!?馬鹿なの?角都馬鹿になっちゃったの?二人揃ってバカんなっちゃったらどうすんのよ!?バカは俺一人で十分だろ!!俺ァバカすんのは好きだけどバカの面倒の見方なんか知らねえぞ!?どうすんだ、コラ!!!」
「どうもこうもあるか。俺は俺のしそうな事をいつも通り俺らしくやっているだけだ。お前もいつも通り勝手に馬鹿でいろ。今更賢くなれとも、増して俺の面倒を見ろとも言わん。…言っても無駄だろう…」
「うん?そう?いつも通り?…じゃ、いっか。…いいか?…いいのか…?」
「いつも使わない頭に必要以上の負荷をかけるとその分体温が奪われるぞ。寒さに鈍っている場合ではない。沿道で撒かれる蜜柑や小餅も間違いなく回収して帰らなければならないのだからな。外套を着込んで高みの見物をしている群衆に競り負けるなよ」
「…それ、振る舞い餅じゃ…」
「知らん。そんなもの聞いた事もない」
「そう…?そう。わかった。じゃ、頑張っか」
「よし、頑張れ。貴重なビタミンと炭水化物の為だ。健康な体あってのジャシン教。しっかりな」
「そうか!よし!ジャシン様の為にガンガン殺…」
「いや、違う。それ違う。殺して回ったら白菜どころの話じゃなくなるからな。お前の頭の回路はどうなってるんだ」
「カイロなんかねぇぞ。テメーやっぱどっかに仕込んでんな!?よこせよ俺にもホッカイロ!!!」
「だから褌一丁で何処に仕込むんだ、この鶏頭!話が振り出しに戻ってるぞ馬鹿が!」
「え?そう?カイロの話なんかしたっけ?」
「…もういい。走れ、飛段」
「あ、それ知ってる。セリヌンティウスがメロスの身代りに…」
「…馬鹿は馬鹿らしく黙って走れ…。お前はメロスじゃないだろう?」
「げはははは。バッカじゃねぇの。あったり前じゃん。俺ァ飛段だっつの…アレ?おじいちゃん、大丈夫?頭から湯気立ってるよ?」
「……」
どっとはらい。