第31章 取り敢えず2018年もよろしくお願いします
「うるか食べたいなと言ったんです、はい、うるかうるか、うるかいいなあ!」
「また酒の宛ですか」
「…ちッ」
「舌打ちは止しなさい。それでなくとも底をついているあなたの評価が更に地に落ちますよ」
「…揚げ出し昼に食って夜食の年越し蕎麦楽しみにしてるだけで何でそこまで言われてるんですか、私は」
「そこに酒が付くからでしょうね。それが実に如実にあなたという人を表してますよ」
「…ホントうるさいな…」
「そういうあなたに付き合おうと言うのです。感謝しなさい」
「有難くて涙が出ますよ」
「涙が出る?泣かないで下さいよ。あなたが泣くと兎に角厄介ですからねぇ」
「…こんな事で泣く訳ないじゃないじゃないですか。何だと思ってるんです、全くもう…。…何ですかその目は」
「何って私の目じゃないんですか?馬鹿な事聞きますねぇ」
「…何だか変わり映えない年が明けそうな気がしますねえ…。2019年」
「またすっ飛んでますよ、牡蠣殻さん…。まあ変わり映えないという意見には全く同感ですがね。…2018年もこんなあなたと切りなく言い合うのかと思うと今から疲れます。思えばあなたに会ってから私はずっと疲れっ放しな気がするんですがね」
「あ、溜め息吐きやがりましたね?失礼な。望むところだ。散々減らず口叩いてやる」
「…もっとまともな抱負を考えたらどうですか」
「四六時中人に狼藉を働いて喜んでる人に言われたかないですよ」
「それが私ですが何か?」
「これが私ですが何か?」
「…ほう。そう来ましたか」
「ええ、そう来ましたとも。取り敢えず2017年もよろしくお願いします」
「…だから牡蠣殻さん…」
「何ですか」
「…もういいですよ。兎に角初売りで眼鏡を誂えましょう。頭はもう諦めるにしても、視界くらいは明瞭にしておかなければ迷惑のかけっ放しで大変な事になりますよ、あなた」
「…初売りで眼鏡…」
「何かご不満でも?」
「いえ、ありがとうございます。縁起いいですね。初眼鏡。面白い」
「あなたの頭並みにお目出度いでしょう?」
「ははは。頗るいい年明けになりそうですねえ。あったま来るなぁ」
「それは何より」
「何が何よりですか…」
「良い年明けをって事ですよ」
どっと払い。