第27章 磯 其の四
「…お下がりなさい。私は父様にお話して来ます」
「一緒に参りましょうか」
沖浪がのんびりと言うから、頭に血が昇った。
「下がりなさいと言ったでしょう!」
癇癪が破裂する。
「お父様にお話して来ます。私一人で!」
肩を竦めた沖浪をよそに、私は天幕の出入り口を荒々しく絡げて表に出た。
一体どういうおつもり?私を磯から出す?何の為に?厭よ!絶妙に厭!
青臭い山の香りに一瞬目が回る。
腹が立って仕方がない。何故こうも何もかも思い通りにいかないのか。
どうすれば思い通りに事が動くのか。
踏みつけた足元から尚濃く草いきれが匂う。
涙が滲んで、全てがぼやけた。