第23章 クリスマスにならない(ぐだぐだ)ー暁ー
「……賑やかですねえ…」
厨の卓にこんがり焼いた鮭の皮を盛った皿を置いて、牡蠣殻が目をすがめた。
「何だか何をしなくても十分楽しそうですが」
「だろ。だからまぁあんまあっちは気にしなくていんだ、うん」
皮を剥いだ鮭の身を玉葱やパプリカ、人参と一緒にマリネしながらデイダラはしたり顔で頷く。
「酒なんか入んなくても十分だから、アイツらは。うん」
「じゃオメェもあっち行って盛り上がればぁ?」
脇から手を伸ばして鮭の身を摘み食いしつつ、藻裾がにんまりした。
「楽しそうだよな。行けよ、ホラ」
「……もうちょっとしたら考えてやる」
「大体ここでクリスマスをしようというのが間違いです。忘年会の方がまだしもマシですよ。何があろうと無礼講のワードが活きますからね」
立ったまま鮭の皮を摘んで鬼鮫は他人事のように広間の方を見やった。
「無礼講ですか。成る程ねえ…。じゃあ今日は止めにして、大晦日に持ち越しますか」
湯呑みに寒北斗を注いで鬼鮫の前に置きながら、牡蠣殻が首を捻る。
「日持ちするメニューに切り替えればいい事だし…」
「まぁ料理しながら厨で呑むのもオツですかね」
湯呑みをスイと空けた鬼鮫に、藻裾とデイダラがにやりと笑った。
「いいっスねぇ」
「いいな、うん」
「……まあいいか」
賑やかな広間の声に、牡蠣殻も首を傾げながら寒北斗を手酌した。
「貴方の機嫌も良くなられたようですし?」
鬼鮫の湯呑みに二杯目を注いで、口角を上げる。
「元々あまりない運を賭け事などに使うのは止した方がいいですよ。馬鹿馬鹿しい」
二杯目も早々に空けて、鬼鮫は眉根を寄せた。棚から出した湯呑みをデイダラと藻裾の前に置いて、牡蠣殻から寒北斗を取り上げる。
「来年は自分の稼ぎで奢りなさい。粗末で貧相でも場合によっては我慢しないでもありませんから」
「ごもっともです」
「牡蠣殻さん、肉、肉、焼き鳥!」
「油揚げと玉子あるか?オイラバクダンが食いてぇな、うん」
「いよいよクリスマスから遠く離れて来ましたが、干柿さんは何が食べたいですか?」
「蟹味噌豆腐」
「…居酒屋か。居酒屋だな」
牡蠣殻は苦笑いして湯呑みを干した。
「まあいいでしょう。企画倒れのクリスマスも。クリスチャンじゃないんだし、喜んで頂ければいい訳ですから」