第23章 クリスマスにならない(ぐだぐだ)ー暁ー
「これから皆何か予定はあるか」
珍しくメンバーが揃った広間で、不意に角都が碇ゲンドウのポーズをとって慮外の問いを投げかけた、暁十二月終盤の夕間暮れ。
「…皆の予定に何の用だ、角都」
小南とあやとりをしていたペインが不思議そうに暁の長老かつ出納係の角都を見やる。
「イブだから何かしよってのか?止せ止せ、クリスマスは金ェかかるぞぉ?洒落なんねえから。ディナーだプレゼントだホテルだ何だって、ホントスゲー金かかる」
頭の後ろで両手を組んで椅子の背に寄り掛かり、ギチギチ前後に揺れていた飛段が身を起こしてしかめっ面をした。
「破産するぜ、マジで」
「そら女絡みの話だろうがよ」
珍しく掌サイズの小さな傀儡を組み立てながら、サソリが面白くもなさそうに鼻を鳴らした。
「金かけねぇと女も口説けねえってんだろ?下らねえ。オメェがモテねえ話なんざ聞きたくもねェよ」
「そんな金があったらリカちゃん人形の強化に使うんだよな、旦那は。うん」
「……黙れデイダラ」
「違いますよ、デイダラ。サソリが弄っているのはリカちゃん人形じゃありません。正確にはリカちゃん人形をそれとなく思わせる人型の何かです」
「……死ねよ鮫」
「クリスマスか…」
イタチが遠い目で呟く。
「…苺と抹茶と求肥でクリスマスカラー…」
「イタチは本当に和菓子が好きね?前の冬に作ったお汁粉も絶品だったわ」
指の間の赤い糸で華麗に箒を組んで高く掲げ、小南が静かにドヤ顔をする。
「…………」
しんとする広間。
ペインが咳払いした。
「で?皆の予定が何だと言うんだ、角都」
「各々予定がないのなら祝い事をしないか」
「あぁ?祝い事だ?何祝ったって忌み事になんだろ、この面子じゃよ!大体いつクリスチャンになったんだよ、ジジィ」
「カリカリしないで下さいよ、サソリ。いい子にしてないとサンタがあなたのバービーをズタズタにしますよ?」
「…俺のバービー?」
「この暁であなた以外の誰がバービーを欲しがると言うんですか。砂辺りに行けば胸糞悪い歌舞伎面の愛好者がいないでもないようですが」
鬼鮫が面白くもなさそうに卓の湯呑みに手を伸ばす。
「あそこらはそういう嗜好が生まれ易い風土なんですかね?」