第22章 厄介な誕生日
この冬一番の冷え込みが晩秋にフライングしたような朝。
一面に霜が立ち、吐く息は吐く前から白い。どうしようもなく寒い午前四時。
「…何で起きてるんです、牡蠣殻さん」
「何ですか、いきなり。じゃ貴方は寝てるってんですか。朝っぱらから納得いかない通常運転ありがとうございます、干柿さん」
「また朝から減らず口を…」
「同じ刻限に目を覚ましていて何で起きてるのかと聞かれたら、一言言いたくもなりますよ」
「私は今さっき起きたところです」
「おはようございます、お爺様」
「…地獄の釜が開く刻限に死ぬとあっさり地獄行きになるんでしょうかねえ…。あなたも興味ありますか?」
「面白い事仰られますねえ。先ずはご自分でお試し下さい。結果がわかったら是非お報せ下さいね。もし地獄行きになるようでしたら、この刻限に寿命が費えないよう全力を尽くして残りの人生を全うさせて頂きますから、私は。親切な干柿さんに幸あれ」
「…腹立ちますねえ…」
「またすぐ怒る。煮干しを齧られませ、お爺様」
「カルシウムの問題じゃありませんよ」
「じゃ性格の問題?」
「話し相手に問題あるんじゃないかと思いますがね」
「ええェッ⁉イタチさんに問題なんかある訳ないじゃないですか⁉言うに事欠いて何て事をまあ…」
「は?」
「は?って、貴方の話し相手と言えばイタチさんくらいしかいないじゃないですか。寂しい干柿さんに幸いあれ」
「…ホンットムカつきますよ、あなたという馬鹿は」
「私という馬鹿?…何か凄い言い回しですね…。私という馬鹿って、馬鹿そのものが私、私そのものが馬鹿みたいじゃないですか?ザ馬鹿、ジャスト馬鹿、馬鹿オブ馬鹿、馬鹿自身、まるっと一冊馬鹿一色…」
「やっぱりいよいよ話し相手が悪いようです。話す程はっきりして来ますよ…」
「イタチさんは馬鹿じゃありませんよ!何言ってるんです」
「何言ってるんですはあなたでしょう。今私は誰と話してます?あなたいつからイタチさんになったんです?図々しい…」