第2章 恋愛ゲーム実況中
「ぬぬぬ…うがああああああ!!」
「わあ、びっくりした。いきなりどうしたのフジ?」
長い実況を撮り終わった途端、
俺は今まで耐えてきた感情を奇声に変えた。
隣に居るのはヒラ。
膝にクッションなんか置いてちょこんと座る姿は
想い人である繭子よりも可愛らしく見えてくるから
もう俺はダメかもしれない。
「ここ2週間繭子と連絡とれてない…」
「あーなるほどね」
繭子は居酒屋で働いている。
人手が足りないとは聞いていたけど思った以上に連絡がとれない。
「繭子成分が足りねえ…。ぎゅっとしたい、匂い嗅ぎたい」
「わあフジ変態っぽーい」
なんとでもいえ。
それくらい今俺はとてつもなく繭子に会いたいんだ。
「でも、別に付き合ってるわけじゃないんでしょ?」
グサッ
「恋人ならまだしも、そうでないなら連絡とれないくらいで騒いでるのは」
「それ以上言うなああああああああああ!!」
恋愛には順序がある。
好きになることが始まりで、
想いを伝えて、互いに好きである条件を元に恋人になって
抱きしめたりキスしたり愛を交わしながら
結婚して子供作って終わりない幸せな日々を送るのだ。
それはもう次第に恋愛ではなくなるけど
それ以上の大切なものになっていくのだ。
だがしかし俺はどうだ。
「あのねヒラ君、俺は繭子と一緒のお布団で一晩を過ごし、抱きしめたり、首筋にキスしたり横っ腹なでたりしたのだよ」
「あーそれセクハラだねえ」
「最後まで聞きたまえヒラ君。確かに恋人ではないけど、友達以上の関係にはなったとは思わないかね」
今までは触れることすら躊躇してきた俺だけど
こないだのあれは、とにかく前へ前へと進んだのではないか。
「んー、でも、ゲームだったんでしょ?あとはフジがちょっと暴走しちゃった感じ?」
「そこは言うんじゃない」
こういう時、真面目に相談に乗ってくれるのはヒラだけだが
たまに痛いところを突かれる。
「じゃあさ、今夜繭子ちゃんのお店行こうよ」
「え?」
「会いたいんでしょ?」
どうも俺の周りの連中は悪い笑みをしやがる。