第1章 仲たがい
放課後、きみくんのところに行った。
きみくんは、百葉箱のそばの木かげで本を読んでいた。
『きみくん、あんなぁ?』
『…』
『なぁ…』
『…スゥ…』
…
…寝とる…
気持ち良さそうに、俺がこんなに悩んでるのに、何にも悩みなんて無いみたいな顔して…
その寝顔が無性にムカついて、
ボカッッッ‼
思いっきし肩をなぐったった…
『…うわぁ、何?何?』
寝ぼけながら、パニクるきみくん。
『何?やないわ、ホンマ、腹立つ…』
『何で?何で俺、すばるに怒鳴られてるん?』
『おま!よぅそんな……自分の胸に手ェ当てて、よぅ考えてみぃ!』
『いや、すばる…そんなぁ…』
困った顔で俺を見上げる きみくん。
寝ぼけてんのか、それともホンマに分からんのか…
『きみくん、ホンマに分からんの?』
『おん、何で怒ってるん?』
俺は、ずっと気になってる事を全部話した。
『…』
きみくんは、何も言うてくれない。
『何で言うてくれんの?俺、ずっと2人の間に挟まれて、ホンマキツいのに…』
『…』
ずっと自分のひざを見てるきみくん。
…あああ、めんどくさっ‼
『なぁ、俺、ホンマどうしたらいいか分からんねん、今‼こんな仲悪い2人の間におるの、しんどいねん、マジで‼なぁ、今度の日曜日、3人で出かけよ‼な‼俺、やっぱり3人でおりたいねん‼仲良くしたいねん‼』
きみくんは下を向いたまま、動かない。
ただ、ひざがびっしょりになってる。
『きみくん、泣いてんのん?』
『…泣いてへんわ!』
ビックリするくらいの大声で、きみくんが言い返してきた。
…もう大丈夫、しゃべってくれるようになれば、きみくんの心はもうすぐとけるはず。
ほしたら、話してもらお。
2人に何があったんか。
俺は急いで自由帳を破って、
『今度の日曜日、すばると出かける、10時にすばるん家の前』
て二枚書いて、一枚をきみくんに渡した。
きみくんは、それをていねいにランドセルの時間割の上に差し込んだ。
とりあえず、これできみくんは真面目やから大丈夫、約束を絶対守ってくれる。
あとは信ちゃんだけ。
意地はって言うこと聞いてくれへん信ちゃんだけや。