【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第13章 氷の国王と氷の貴公子
(は・・・恥ずかしい・・・)
「ちゃ・・・ちゃんと覚えてるよ?」
ルイ「少しでしょ」
「全部覚えて・・・・・・っ・・・」
ルイの言葉を否定しようと
視線を上げた瞬間、
バルコニーのタイルの
小さな段差に躓いて、
ルイの胸元に倒れ込む。
ルイ「・・・・・・っ」
「っごめん・・・」
慌てて体を離すと、
体勢を立て直そうとしてくれた
ルイの手が一瞬だけ髪に触れた。
一歩分だけ距離を空けて
見つめていると、
ルイがぽつりと呟いた。
ルイ「・・・本当は、お礼を言わないといけないのは・・・俺の方」
「・・・え?」
ルイ「このパーティーは、・・・大切なものだったから」
何かを思い出すように、
ルイが一瞬ホールに視線を向ける。
「・・・・・・・・・」
音楽がふっと鳴りやんだ瞬間、
澄んだルイの声が
続きを奏でるように耳に届いた。
ルイ「ありがとう」
「・・・・・・うん」
(ルイから貰う『ありがとう』が、こんなに嬉しい・・・)
噛み締めるように目を閉じて、
再びルイを見上げる。
「今の言葉、覚えとく」
自分のこめかみを
とんとんと指差して微笑むと、
ルイは視線を逸らして呟いた。
ルイ「・・・・・・いいから。・・・倒れ込む癖があることだけ、覚えておいて」
「・・・・・・倒れ込む・・・」
ルイ「・・・やっぱり、覚えてない」
ルイは柔らかい口調で言うと、
背中を向けて歩き出す。
「・・・ちょっと、ルイ・・・」
背中を追うと、
ルイが一瞬だけ歩幅を狭くしてくれる。
(・・・本当は全部ちゃんと覚えてるってことは、言わなくても、いいかな・・・)
小さな秘密を胸に閉まって、
ルイの隣に並んで歩く。
繋いだ手は
とっくに離れたはずなのに、
手のひらには
いつまでも
温かさが残っていた・・・――。