【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第2章 ウィスタリア王国
車が城門の前に停車すると、
優雅な動作で先に降りたジルが
ごく自然にエスコートしてくれる。
ジル「お足元にお気をつけください」
「ありがとう、ジル」
差し出された手を取り、車から降りる。
目の前には息を呑むほどの
美しい宮殿・ウィスタリア城。
「・・・とても、美しいお城ですね」
ぽつりと私がこぼすと、
ジルは微笑んで答える。
ジル「ええ、わが国の象徴ですからね」
ジルと共にエントランスを抜けて
お城の中に足を踏み入れると、
まるで本当に童話の世界に
飛び込んでしまったのでは、
と錯覚を覚える。
大理石の床に鮮やかに映える真紅の絨毯、
白亜の壁の先にある繊細で緻密な彫刻と
壮大な絵画。
目の前には足元と同じように
真紅の絨毯を纏った大きな階段。
その階段を一人の男性が下りてくる。
ジルはその人物を見て、私に微笑んだ。
ジル「零様、この国にいる間貴女にご不便がないよう、身の回りお世話をする者をご紹介致します」
ユーリ「初めまして零様。困ったことがあったら何でも言ってよ。執事のユーリ=ノルベルトです。ユーリって呼んでね」
愛らしい笑顔を向けるその人は、
ピンクがかったブロンズの髪に
大きなアーモンド色の瞳をした、
まだ少しあどけなさの残る青年だった。
「初めまして、ユーリ。今日からしばらくお世話になります」
ジル「ではユーリ、城の案内は頼みましたよ。私はこの後、会議がありますので。零様、また後ほどお会いしましょう」
ユーリ「はい、ジル様」
「ジル、ここまでありがとうございました」
私はジルに向き直り姿勢を正すと、
丁寧に一礼をした。
顔を上げると、
ジルは最初のように艶麗に微笑んで
足早に去って行った。
ユーリ「それじゃあ零様、ご案内いたします」
にっこり笑って胸に手を当て
腰を折ったユーリと共に、
私はゆっくりと歩き出した。