【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第11章 謎の男と不穏な動き
零が出て行くと、
ルイはシドの腕を振り払う。
ルイ「・・・・・・プリンセスに何をした」
シド「ご挨拶してただけだろ、そんなカッカすんな」
シドは椅子にどかっと座ると、
ルイを見て楽しそうに笑う。
シド「あのプリンセス、何も知らねえんだな」
ルイ「・・・?」
シド「お前が会社を経営している目的も、今の地位を手に入れるために、どれだけの代償を払ってんのかもよ」
ルイ「・・・・・・お前」
シド「事実じゃねえか。・・・知られたくねえんだろ?あの勘の良さそうなプリンセスに」
シドの挑発的な笑みとは対照的に、
ルイの顔は次第に強張っていく。
シド「お前のことを信用してるみてえだが・・・あのプリンセスも『訳あり』みてえだな」
ルイ「・・・?」
シド「自分に似てるから、お前は守りてえと思っちまうんだろ」
ルイ「守りたいなんて感情・・・」
シドはルイの揺らぎを鼻で笑うと、
椅子から立ち上がる。
シド「暗い道を歩いて来た奴は、明るい道に惹かれるもんだ」
立ち上がると扉に向かって歩き出す。
すれ違い様にシドはルイを見下ろした。
シド「気をつけろよ、泣き虫坊っちゃん」
ルイ「・・・何?」
シド「どうして俺が今夜、この城にいると思う?」
その問いかけに、
ルイの瞳に氷のような冷たい色が浮かぶ。
シド「俺から高額な値段で情報操作をする手筈を整えようとしてる奴がいるってことだ」
ルイ「クロードに・・・手を貸すつもりか・・・っ」
ルイがシドの胸元を掴むと、
可笑しそうな笑い声が響いていく。
シド「そんな顔すんな、『今』は情報は売らねえよ。お前をからかった方が、格段に面白えからな」
ルイはシドを睨むと、
ぞんざいに手を離す。
シドは一度だけ薄い笑みを向けると、
扉に手をかけて冷静な声で尋ねた。
シド「守るもんこれ以上抱えて悩んでんなら、世話ねえな」
ルイ「・・・守ってるものなんて、俺には何一つない」
シドはそれ以上何も言わずに、
重い扉を閉めた。
外からの空気が遮断されると、
ルイは手のひらを机の上に置いて
ぎゅっと握りしめた。
ルイ「・・・・・・全部、自分のためだ」