【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第10章 プリンセスと秘書
不意に、
甘い香りが微かに香った。
「・・・・・・バニラの匂い・・・」
私の呟きに
ルイが一瞬戸惑った表情を浮かべ、
机の隅に手を伸ばす。
ルイ「これ」
ルイが手にした何かが、
窓から差し込む光に照らされて光る。
(これ・・・)
キラキラと光を反射していたのは、
キャンディのラベルが貼られた
空っぽの瓶だった。
(・・・なんか)
「・・・ルイが飴を舐めてるなんて、意外」
ルイ「・・・たまたまだから」
「ふうん・・・」
疑いの目を向けると、
ルイは複雑そうな表情をする。
ルイ「・・・手、動かして」
誤魔化すように視線を逸らすと、
ぽつりと呟いた。
「・・・言われなくても」
コトンと小さく音を立てて
机に置かれた瓶が、
光を受けてまた乱反射する。
(・・・一緒にいると、ルイの色んな顔が知れる)
こんなに
誰かの表情が気になるのは初めてで、
ちょっと戸惑う。
だけどそれより、
知れることを嬉しいと思っている
自分に気づいてはっとした。
(・・・っ・・・何、変なこと考えてるの・・・)
手を動かしながら
ルイに気づかれないように
そっと息をついた時、
扉を叩く音がした。
ルイ「・・・・・・?」
ルイが扉を開けると、
そこにはジルの姿があった。
ジル「失礼致します、ハワード卿」
ルイの後ろから顔を出すと、
ジルはすっと目を細める。
ジル「やはり、こちらにいらっしゃったのですね」
「・・・何か用」
ジル「さきほど、プリンセスに招待状が届いたもので」
微笑みながらジルが招待状を差し出す。
ジル「・・・本日中にお返事を」
ルイ「・・・・・・・・・」
ジルから招待状を受け取って、
そこに書かれた文字に視線を走らせる。