• テキストサイズ

【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第10章 プリンセスと秘書


ルイ「・・・・・・待って」

「・・・?」

 振り返ると、ルイと視線が重なる。

ルイ「・・・仕事、頼んでもいい?」

「・・・え」

ルイ「受領書に押捺してもらいたい」

 そう言って、
 ルイはすっと自分の隣にある椅子を
 引き寄せた。

ルイ「・・・・・・駄目?」

 突然のことに
 呆然とその場に立ち尽くす私を、
 ルイが見上げる。

「・・・・・・駄目じゃないけど・・・」

 答えながら、私はジルに
 秘書をやるようにと
 言われた日のことを
 思い出した。


ルイ「飽きたら、好きに出ていけばいい」


ルイ「・・・座らないの?」

「・・・座る」

 短く答えて椅子に座ると、
 すっと書類が差し出された。

ルイ「・・・お願い」

「ん・・・」

 ルイの隣に並んで座り、
 渡された書類一枚一枚を
 しっかりチェックしながら
 丁寧に押捺していく。

 始める前に話したきり、
 互いの間に会話はない。

 静かな部屋には、
 ただ互いが手を動かす音だけが
 響いていた。

(・・・・・・あれ)

「・・・ルイ」

ルイ「・・・?」

「ごめん、これサインが抜けてるみたいだけど」

ルイ「・・・どれ?」

「・・・ここ、この文の下」

ルイ「・・・・・・・・・」

「ここにサインがないと駄目なんでしょ?」

ルイ「・・・ああ、抜けてた」

 ふっと顔を上げた瞬間・・・・・・

(・・・・・・っ・・・)

 ルイの前髪が額に触れて、
 至近距離で視線がぶつかる。

「・・・・・・ごめん」

ルイ「・・・気にしてない」

 距離が離れて
 手元の書類をルイが引き寄せた。

(・・・・・・この匂い・・・)
/ 221ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp