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【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第8章 冷たい瞳のその奥に



ルイ「・・・・・・こっち」

 周りには
 聞こえないくらいの声で呟いて、
 ルイは私の手を引いて
 人ごみの中を縫っていく。

 そうしてバルコニーに出ると、
 手首を掴んだまま
 ルイがすっと目を細めた。

ルイ「・・・どうして、声をかけに来たの」

 少しだけ低くなった声に、
 視線を上げる。

ルイ「近くに来なかったら、あんなことに巻き込まれなかった。・・・違う?」

(・・・ああ、やっぱり)

 夜風が私とルイの髪をさらっていく。

「・・・巻き込まれたんじゃない。私が、自分で選んだだけ」

ルイ「・・・どういうこと」

 眉を寄せたルイが尋ねる。

「・・・別に今日じゃなくても、こういう日はいつか来たはずだから」

ルイ「・・・避ける術はいくらでもある」

(そう・・・避ける術はいくらでもあった。でも・・・)

「私は・・・もう、逃げたくない・・・」

ルイ「・・・?」

「・・・プリンセスになるってことは、良いことばかりじゃないって・・・解ってるから」

ルイ「・・・・・・・・・好きにすれば」

 冷めた声だけを残して、
 ルイは夜闇に消えて行く。

(・・・・・・本当のことなんて、言えるわけがない・・・)

 ため息をついて夜空を見上げ、
 いつの間にか人気のなくなったホールに
 足を踏み入れると、声が聞こえた。
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