• テキストサイズ

【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第8章 冷たい瞳のその奥に





 ユーリのエスコートでホールに足を踏み入れると、
 賑やかな声が耳に飛び込んできた。

(・・・・・・やっぱり、こういうの苦手)

議員「これはこれは、プリンセス。初めてお目にかかりますな」

 心の中でぼやいていると、
 議員に声をかけられた。

「お初にお目にかかります。今夜は足をお運び頂き、ありがとうございます」

 ドレスを軽く持ち上げて、
 私は丁寧に頭を下げた。

 その議員を皮切りに
 私に好奇の目を向ける人たちが
 挨拶に訪れ、
 しばらくその対応に追われた。

 挨拶に訪れる人の波が
 ひと段落着いた頃、
 私は深く息をついた。

ユーリ「零様、お疲れ」

 隣にいるユーリが
 私の顔を覗き込んで苦笑する。

ユーリ「うん、今日も顔に出てるね」

 お話し好きな議員のおじ様に
 高飛車な政治家、
 さらには私の立場を利用しようとする
 下心見え見えの貴族たち・・・。

 そんな人たちの相手をしていたら、
 嫌でも態度が顔に出る。

「・・・・・・もう、勘弁して・・・」

 そう呟いて、
 何気なく視線を向けた先に・・・・・・

「・・・・・・あ」

(・・・ルイ)

 遠く離れていても分かるその容姿に、
 自然と目が奪われた。

令嬢「ねえルイ様、今度ぜひ公爵邸にお邪魔させて頂けないかしら?」

令嬢2「私が先ですわ」

ルイ「・・・・・・・・・」

(・・・あの瞳・・・)

 たくさんの女性に囲まれている
 ルイの瞳は冷たく、
 何も映していないように見えた。

(・・・・・・)

 無意識にルイの元へ向かおうとすると、
 ユーリが私の手首を掴んだ。

ユーリ「ダメだよ、零様」

 見上げると、緩く首を横に振られる。

ユーリ「ルイ様の周りにいる女性は、みんな有力な貴族のご令嬢だよ」

「・・・・・・」

(・・・解ってる)

「・・・平気。嫉妬されるって言いたいんでしょ」

 真っ直ぐにユーリを見つめると、
 ユーリは軽く目を見張って眉を寄せた。

ユーリ「・・・行ったらきっと、嫌な目に合うよ?」

「・・・うん、解ってる。・・・でも」

(・・・だから)

 ゆっくりとユーリの手を解き、
 私はユーリに告げた。

「私はルイを放っておけない」

(・・・ルイの心が、泣いてるのだけはわかるから)

/ 221ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp