【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第26章 夢√編 魔法の解けたシンデレラ
それは、
プリンセスになった日にユーリに没収された
私の携帯だった。
その携帯を私の手に乗せて、
ユーリは微笑んだ。
ユーリ「何かあったら、いつでも連絡して。俺の番号、一番上に入れておいたから」
私が目を見開くと、
ユーリは笑顔のまま
一度だけ大きく頷いた。
「・・・それじゃ、ジル。色々とありがとう。・・・・・・皆に、よろしくね」
ジル「・・・ええ、零様」
ジルにガラスの靴を渡し、
私はボストンバッグを手にしようと
腰を屈めた。
ジル「・・・本当に、お見送りしなくてよろしいのですか?」
「・・・うん、大丈夫。空港までの車を手配してくれただけで、十分」
ジル「最後まで・・・、貴女らしいですね」
その言葉に小さく笑ってジルを見つめる。
「・・・ジル、今日までプリンセスとして支えてくれたこと、心から感謝します」
ジル「零様・・・・・・」
「私はこの国が・・・皆が、大好きだよ。・・・どうか、このウィスタリアがこれからも、たくさんの笑顔と幸せで照らされますように」
祈るように手を組んで視線を伏せる。
「・・・・・・遠く離れた日本から、祈ってる」
ジル「ありがたいお言葉・・・、国王陛下にもお伝えさせて頂きますね」
「・・・うん」
ジル「零様・・・、どうかお元気で」
「・・・うん」
(・・・・・・絶対に、戻ってくるよ)
言えない想いを笑顔に変えて、
私はジルに笑いかけた。
・・・・・・・・・・・・
ジルの部屋をあとにして、
歩き慣れた長い廊下を歩いて行く。
(・・・本当は、皆にちゃんとお別れしたかったな)
まだ朝日が昇ったばかりで
静まり返ったお城の中から、
窓の外の太陽に目を細める。
(・・・行こう)
ボストンバッグを握り直したその時・・・・・・・・・