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【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第23章 偽物王子の大きな覚悟



 ルイの表情に違和感を覚えたけど、
 気づかない振りをして私は笑った。

「・・・ルイって、ほんと寝起き悪い」

 柔らかなルイのブロンドの髪に指を通して、
 私は静かに立ち上がった。

「公務があるから、先に行くね」

ルイ「・・・うん」

 ドレスに袖を通して、
 机の上に置いたガラスの靴に手を伸ばす。

「・・・これ、今日使うから衣裳部屋に戻しておかなきゃ」

ルイ「夢から、出てきたみたいだね」

「そうだね」

 朝日を受けて光るガラスの靴を見つめて、
 ふっと笑みを零す。

(でも・・・、これは夢でもおとぎ話でも何でもない。・・・・・・ちゃんと、自分の手で・・・触れられるから)

 ガラスの靴を抱えて扉に手を掛けると、
 背中にルイの声が届く。

ルイ「零」

「ん・・・?」

ルイ「・・・いや、なんでもない。ただ、名前を呼びたくなっただけ」

「・・・そう」

(・・・・・・やっぱり、なんか変)

 そう思うけど、確証はなくて。

 私はまた、
 悟られないように笑って
 ルイの瞳を見つめた。

「ルイ」

ルイ「ん・・・?」

「・・・呼んでみただけ」

ルイ「まねっこ」

 一瞬お互いに笑い合って、
 私はルイを残して部屋を出た。



 零の足音が遠くなると、
 ルイは笑顔をふっと消した。

ルイ「・・・・・・・・・」

 手のひらに残る
 零の体温を握りしめるように、
 きゅっと握って眉間に押し当てる。

ルイ「・・・・・・・・・俺は、偽物の王子だよ」

 窓から差し込む朝日が、
 容赦なくルイを照らす。

 ルイはふっと顔を上げると、
 明るい陽ざしを求めるように
 目を細めた。

ルイ「だけど俺は、・・・君のために」

 眉間に押し当てた手を静かに下して、
 誰に告げるでもなくルイは呟いた。

ルイ「本物の王子になりたい」

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