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【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第20章 初めての遊園地


ルイ「零」

「・・・・・・ルイ?」

 名前を呼ぶと、
 また声が重なっていく。

ルイ「ゆっくり後ろを向いて」

 言われた通りにゆっくり振り返ると、
 そこには・・・・・・

ルイ「今日はありがとう」

 片手に風船を持ったルイが立っていた。

「これ・・・・・・」

ルイ「ごめん、酔ったなんて嘘ついて。・・・喜んだ顔、見たかったから」

(・・・・・・もう・・・)

「びっくりした・・・けど、嬉しい。ありがとう、ルイ」

ルイ「良かった・・・少し、緊張した」

 少しはにかんで
 ほっとしたように小さく笑うルイから
 風船を受け取ると、
 夕陽に照らされてゆらゆらと揺れる。

(あれ・・・・・・)

「風船の中に・・・箱が入ってる」

ルイ「・・・うん」

「何が入ってるの・・・?」

ルイ「秘密」

(・・・っ・・・・・・)

 ドキッとするほど
 魅惑的な笑みを浮かべて、
 ルイが笑う。

ルイ「風船はいつか消えるから、残るものだよ」

「そっか・・・それなら、寂しくないね」

 風船を見上げていると、
 髪にルイの手がそっと触れる。

「ルイ・・・っ・・・・・・人に見られちゃう」

ルイ「・・・・・・それじゃ」

 ルイは私の手を掴むと、
 風船ごと軽く引き寄せた。

ルイ「・・・こうする」

 引き寄せられた風船が、
 視界を鮮やかに染めていく。

(・・・・・・っ・・・)

 風船の影に隠れて唇が触れると、
 ルイが下唇を軽く噛んだ。

「・・・っ・・・、・・・ん」

 音を立てて唇が離れると、
 当たり前のように視線が重なる。

ルイ「これ買って正解」

「馬鹿・・・」

ルイ「・・・知ってる」

 ルイが風船を背に、楽しそうに笑う。

(・・・・・・幸せ)

 胸を満たす愛おしさを噛み締めて、
 私はルイの手を握り返した。



 ・・・・・・・・・・・・



 少し早めのディナーを食べて
 お城に着く頃には、
 すっかり夜になっていた。

(・・・着いちゃった)

 視線を上げると、
 ルイは私の顔をじっと見つめて
 手を掴んだまま、
 秘密を抱えた子供のように目を細めた。

ルイ「・・・こっち」

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