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【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第17章 守りたいもの



ゼノ「・・・なるほどな。文書を手配して、信用を買おうということか」

 ゼノ様は一度視線を伏せると、
 机の上で手を組んで低い声を発する。

ゼノ「一つだけ聞こう」

「はい」

ゼノ「会社を助けたいのは、ハワードのためか・・・それともウィスタリアのプリンセスとしての頼みか」

 ゼノ様の射抜くような瞳に、
 私は迷いなく答える。

「どちらもです」

ゼノ「・・・・・・・・・」

「ハワード卿の守りたいものは、プリンセスの私が守りたいものですから」

 ゼノ様は微かに笑うと、
 ペンを取り出しながら言う。

ゼノ「すぐに文書を手配しよう。きっと、視察までには間に合うはずだ」

「ありがとうございます」

ゼノ「もう行け。・・・今、あの国にはプリンセスのお前が必要だ」

「はい」

 頷いて踵を返した時、
 ゼノ様の声が背中に届く。

ゼノ「この文書は一時凌ぎだ。ここから先は、手を貸せない。・・・信用を勝ち得るのは、己自身なのだからな」

 ゼノ様の言葉に、
 私はゆっくりとゼノ様に向き直る。

「はい、それなら・・・正面から真摯に向き合うのみです」

ゼノ「・・・そうか」



 零が去ると、
 ゼノはペンを置く。

アルバート「お呼びでしょうか、ゼノ様」

ゼノ「これを、ウィスタリアまで」

 アルバートは文書をじっと見つめると、
 眉を寄せる。

アルバート「なぜ、ゼノ様はあの小娘に肩入れするのですか」

ゼノ「・・・国を守りたい、大切なものを守りたいという気持ちに、共感した。・・・それだけのことだ」

アルバート「・・・・・・私には全く理解不能ですが」

 アルバートは脇に抱えたノートPCを開くと、
 眼鏡のつるをくいっと上げる。

アルバート「ゼノ様のご命令です、この文書をデータにして送りましょう。運んでいたら、陽が暮れてしまいますので」

 ゼノはふっと笑みを浮かべると、
 窓の外に視線を移す。

ゼノ「・・・見物だな、プリンセス」




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