【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第16章 初めて触れた貴方の心
見上げると、
ジルが今まで見たことが無いような
複雑な表情を浮かべていた。
ジル「唯一の肉親を亡くされて、必死に前を向いて歩く貴女を見る、ハワード卿の表情を見ていたら・・・もう少しだけ、と。・・・先延ばしにしたことは謝ります」
「・・・・・・・・・」
肩に触れるジルの指先の力が、
強くなっていく。
ジル「貴女なら、このことを知っても・・・何ら変わらないと、わかっていたはずなのに」
言葉とともに
ジルの表情が苦しげに歪む。
私は肩に置かれたジルの手を
そっと握ってジルを見つめた。
ジル「プリンセス・・・?」
「・・・ジル、私はルイの力になりたい。だから・・・・・・ルイのこと、教えて。・・・お願い」
暗いエントランスホールに
靴音だけが響いていく。
ジル「・・・会社の実権を握っているのは現・国王陛下だとお話したことを、覚えていますか?」
「うん」
ジル「ウィスタリアには現在、20近くの孤児院があります。その全てを維持するのには資金が必要で、数年前によぎなく数か所の閉鎖を求められたことがあり・・・その時、ハワード卿が国王陛下と契約を結んだんです」
「・・・・・・契約」
ジル「ええ、・・・ハワード卿が会社を自由に経営し、その資金を孤児院に支援する権利。そして、万が一のことがあった場合は、国王陛下が国を挙げて孤児院の支援をする約束ですよ」
「・・・・・・ルイは、何と引き換えに契約を結んだの」
ジル「第一王位継承者として、この王宮に留まること。・・・もし、国王陛下が死去した際に三つ巴が継続していた場合、国王になること」
「・・・・・・・・・」
ジルの言葉が、重く背中に伸しかかる。
「全部・・・、孤児院を守るため・・・」
ジル「ええ、自分だけが見染められ公爵として何不自由のない生活を得た・・・その負い目を、ずっと背負っているんですよ」