【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第2章 ウィスタリア王国
(・・・どうか、してる・・・・・・)
この国に来てから、
どうしてか自分が自分でいられない。
だけどそれが何故かは分からなくて、
もどかしさだけが増えていく。
考えながら俯いて歩いていて、
角を曲がった瞬間・・・・・・
「いた・・・」
?「・・・痛え」
ドンッと正面から誰かとぶつかり、
ほぼ同時に声を上げる。
鼻を押さえながら
目の前の人を見上げると、
怪訝そうに眉を寄せる赤い瞳が
私を見下ろしていた。
(・・・・・・誰)
ユーリ「零様、アラン様、大丈夫?」
駆けつけたユーリが私たちを交互に見る。
(アラン・・・?)
もう一度見上げると、
その男性がため息をついて言った。
「ぶつかっといて謝りもしねえの」
(・・・自分だって前見てなかったくせに)
「・・・・・・それは、お互い様だと思いますけど」
?「・・・・・・」
ユーリ「まあまあ二人とも」
私たちの間に流れる不穏な空気に、
堪らずユーリが声を上げる。
ユーリ「零様、この方は騎士団で団長をされているアラン様だよ」
アラン「・・・どうも」
ユーリ「アラン様、こちらは明日のパーティーのために日本からいらっしゃった国王陛下のご友人のお孫さんの桐谷零様だよ」
ユーリの言葉に、
アランと呼ばれる男の人は軽く目を見開く。
アラン「国王陛下の?」
「・・・先ほどは失礼致しました、アラン様。しばらくお世話になります。どうぞ、よろしくお願い致します」
薄く微笑んで
丁寧な言葉と共にお辞儀をすると、
アラン様は訝しげな顔をする。
アラン「・・・さっきと態度違くねえ?俺のことは、アランでいい。それから、その堅苦しい敬語もいらない」
「・・・そう。じゃあ、アラン。改めて、よろしく」
アラン「ああ」
口角を上げて短く返事をすると、
アランは踵を返して靴音を響かせながら
去って行った。