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【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第15章 青い鳥とスキャンダル


 一緒に鳥かごを持って部屋に入ると、
 ルイは鳥かごを
 陽ざしが入る窓辺にそっと掛ける。

(そういえば、さっきアランが公爵邸って言ってたけど・・・)

「・・・この子は、公爵邸で飼ってるの?」

ルイ「・・・そう、公爵邸の使用人からシャルが元気がないって連絡をもらった」

「シャル・・・?」

ルイ「この青い鳥の名前」

「そうなんだ」

ルイ「・・・公爵邸は、ここに来る前に住んでた場所」

「そう・・・」

 ルイの表情が微かに暗くなった気がして、
 それ以上聞くのは辞めた。

「でも、きっとルイのそばだったらシャルも元気になるね」

ルイ「・・・え」

「え・・・。だって、ルイがこの子の飼い主でしょ」

 鳥かごの中のシャルを見つめていると、
 ルイの気配をすぐそばで感じる。

ルイ「そうだね。・・・けど元気になっても・・・閉じ込めてることには、代わりない」

「・・・?」

 視線だけで尋ねると、
 ルイはシャルを見つめたまま言葉を重ねる。

ルイ「外に飛び出したら、きっと生きていけない」

 耳に届く声が、
 少しだけ憂いを帯びた気がした。

ルイ「一度かごの中に入ったら、外で生きていく力がなくなるって、聞いたことがある」

「・・・そう」

 視線をルイに向けると、
 至近距離で視線が重なった。

ルイ「でも・・・君だったら、どこへでも飛んで行けそう」

 重なったルイの視線が、
 微かに揺れた気がする。

 どうしたの、そう聞きたくなったけど
 なんだか違う気がして、
 私は口を開いた。

「・・・今までも、世界中を飛び回っていたしね」

ルイ「・・・確かに、そうだね」

 ルイは視線を伏せると、
 扉に向かって歩いて行く。

「出かけるの?」

ルイ「・・・うん、少し出てくる。一緒に運んでくれて、ありがとう」

 ルイの背中が、扉の向こうへ消える。

(今日のありがとうは、少し寂しそうだったな・・・)

 窓の外に目を向けると、
 陽が沈み始めている。

 この後の公務のために、
 私もルイの部屋を後にした。



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