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【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第14章 名付けることのできない気持ち


 ルイの指が離れた場所には、
 プリンセス選定式の時にもらった
 白い花のコサージュがつけられていた。

「・・・失くしたとばかり思ってた」

ルイ「大切なものだと思ったから・・・。今度は、落とさないで」

(大切なもの・・・か)

「ありがとう・・・」

 胸につけられた白い花も、
 夕陽に染まり鮮やかな色を帯びていく。

(そう言えば・・・・・・)


「・・・『願いが、叶う花』・・・」

(この白い花を見つけると、何でも願いごとを叶えてくれる、か・・・)

(・・・ルイに聞いたら、なんて答えるかな・・・)


 白い花のコサージュを見つめて、
 いつの日か図書館で見た
 純白の一輪の花が咲いていた
 古い絵本を思い出す。

「・・・ねえルイ。『願いが叶う花』っていう絵本、知ってる?」

ルイ「・・・知ってるよ。ウィスタリアでは、有名な絵本だから」

「もし・・・、その白い花があるとしたら、ルイはどんな願いを叶えてもらう?」

 ルイは私から視線を外すと、
 海を見つめて呟く。

ルイ「・・・願いは、無い」

「無い・・・?」

ルイ「うん、それにそんな花・・・どこを探したって無いよ」

「そ、っか・・・」

ルイ「・・・うん」

 微かに笑みを浮かべるルイの表情が、
 どこか物憂げで目が逸らせなくなる。

 願いが無いという
 ルイの横顔を見つめながら私は思った。

(・・・私と、おんなじ。願いは、無い・・・。・・・だけど、望んでもいいのなら・・・私は、ルイにもっと笑ってほしい。その顔を、見ていたい・・・。私は、ルイに・・・――)

「・・・・・・っ・・・」

 頭に浮かんだ二文字を、
 必死に掻き消していく。

(そんなこと、あり得ない・・・)


「私がルイを好きになることはない。ただ・・・100日間、私はルイを・・・全力で守りたい」


(・・・私は誰も、好きにならない・・・なっちゃ、いけない・・・・・・)

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