【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第14章 名付けることのできない気持ち
運転手さんにお願いして
車を止めてもらい、
窓から見えていた海辺に下りる。
(・・・・・・海なんて、久しぶり)
ルイ「・・・・・・・・・」
「・・・?」
その場に立ち尽くしている
ルイに気がついて、
振り返った。
「・・・ルイ?」
ルイ「・・・・・・いや」
ルイは、その青い瞳に
茜色に染まる海を映して呟く。
ルイ「見たことはあったけど・・・こんなに近くまで、来たことはなかったから」
ルイの表情から、
その後に続く台詞は想像がついた。
「・・・私も、似たようなもんだよ。・・・・・・上から見たことは数えきれないほどあるのに、こうやって、近くで見るのは・・・たぶん、片手で数えられるくらい」
苦く笑ってドレスの裾を軽く持ち上げ
その場に座ると、
ルイも隣に腰を下ろした。
(・・・この海の先には、私がいた国がある)
波打ち際を見つめて、
自分がいた場所を思い出す。
(・・・・・・私の居場所って、どこだっけ)
もうすっかり当たり前になった
王宮での生活に、ふと思う。
ルイ「・・・何を考えてるの?」
「ん・・・?」
視線をルイに向けると、
ルイはとんとんと
自分の眉間を指差して言う。
ルイ「さっきから難しい顔、してるから・・・気になる」
「・・・心配、してくれてるの?」
ルイ「・・・そういうわけじゃないけど」
その言葉に小さく笑い、
視線を海に戻して
小さく息をついた。
「・・・私の居場所って、どこなのかなって・・・考えてた」
ルイ「・・・寂しいの?」
「・・・・・・わからない。でも、今が大切なのは確か」
(・・・どこだっていい、私を必要としてくれる人がいるのなら。その人のために頑張ることができるなら、きっとそこが私の居場所だから・・・。ここでの時間を、出会った人たちを・・・大切にしたい)
少しの沈黙の後に、
ルイがひどく落ち着いた声で頷く。
ルイ「・・・そう」
夕陽に染まる顔を見ていると、
ルイがふっと思い出したように
ポケットに手を入れた。
ルイ「・・・これ、ずっと渡し忘れてた」
「ん・・・?」
ドレスの胸元に手が伸ばされて、
指先がそっと離れていく。
ルイ「君のものだから」
(これ・・・・・・)