第6章 あとどのくらいで、君の瞳に映れるのか
「子供の頃から、毎年雪が降ると体調を崩すの」
ローテーブルに置かれていたまだ湯気が立ち篭めるココアを一口飲み、話を続けた。
「その頃は季節の変わり目が原因だと思ってた。だけど十歳を超えた辺りから年に二回来たり、冬島に近付くだけでもそうなるようになって。その時によって寝込む期間は変わるんだけど、酷い時は一ヶ月動けない事もあったわ」
アクアはカップを持ったまま、窓の外を見る。
そこに広がるのは雲がかかった空と、いつからか降り始めた雪。
「旅の途中にいろんな島の病院に行った。だけど、どんなに発展した先進医療国も、天才と謳われる名医も、みんなお手挙げ」
突きつけられたのは、原因不明と言う言葉だけ。そう呟いた彼女は睫毛を伏せた。
「それをずっと一人で耐えてきたのか」
「そうよ。こうして三日で回復するなんて稀。半年前なんて二週間動けなくて、宿主さんに介護してもらったんだから」
懐かしい、なんて悠長に口にしたが、彼女自身もその体質には困り果てているのだろう。話の節目に零すため息に、そう感じた。
そして、何かを悟ったかのような顔をして。
「私、死ぬのよ」
何とも物騒な単語を言い放った。