第6章 あとどのくらいで、君の瞳に映れるのか
「…何故そう思う」
「自分の身体くらい自分で分かる。根拠なんて無いけどね」
ふふ、と小さく自嘲気味に笑う彼女を見た。
切なげなその顔は、アクアに出逢ってからすっかり見る事の無くなった夢の中の彼女と同じものだ。
「だから、早く見つけなきゃいけないの」
鋭い目で顔を上げた。
「私が死ぬ前に、必ずあいつらを…!」
それは、揺るぎない決意。
アクアの抱く野望は、正直無謀なものだと思う。
だが、自分も報復と制裁で復讐する事はアクアと何ら変わりはなくて、それを止める権利は無い。彼女の大切なものを失ったという想いは、痛いほど分かる。
だから、おれに出来る事は…
「死なせねェよ」
アクアの顔から先程見せた鋭いものが消えた。
「必ず原因を突き止める。世界中回ってその病を治してやるよ」
言葉にするのには、あまりにも簡単なものだ。だが、例えどんなに名誉ある医者達が治せないものでも、おれは必ず。
「おれはお前を見捨てたりしない」
――――お前は、おれのものだから。
腰を屈めてアクアを抱きしめる。
ずっと寝込んでいたからか、少しだけ痩せたその身体に、愛しいという感情がおれの中を支配していった。こいつに出逢うまでは、そんな想いを持ち合わせた事無いと言うのに。
全く、大番狂わせだ。
「トラ、ファルガー…」
少し苦しそうに呟いたアクアを無視して、気が済むまで彼女を抱きしめた。
【あとどのくらいで、君の瞳に映れるのか】