第6章 あとどのくらいで、君の瞳に映れるのか
「海中を進んでいるため、海上の状況は判り兼ねますが…海底の植物や魚から憶測して、恐らく次の島は…」
「多分、冬島よ…」
パラパラと偉人達の描いた海図の本を捲っていると、声が聞こえ振り向く。
そこには、気怠そうに扉に凭れ掛かっているアクア。
どことなく、様子がおかしい。
「なんでわかるんだ?」
「さぁ…なんとなくよ」
そう言うアクアの額には、薄らと汗が滲んでいた。
海中には、時折海底火山に近付いて暑い時もあるが、今現在近くにそんなものはないし、少し肌寒いくらいだ。
「体調悪いのか?」
ペンギンもそれに気付き、声を掛ける。だが彼女は「別に…」の一点張りで、答えようとしない。それは逆に不自然に感じてしまう。
「隠すな。風邪でも引いたんだろ」
「…引いてないってば」
アクアもさすがに自分が問い詰められているような気になって、気分を悪くしたんだろう。彼女と長いこと一緒にいて知った、不機嫌なときの口を尖らせる癖が見えた。
そして、その癖は正解だったらしく、大袈裟に踵を返し去って行った。
そう、思った。
ガタンと盛大な音がアクアが歩いて行った方から聞こえて、思うより先に身体が動いて廊下へ飛び出した。