第5章 そんな優しい言葉は卑怯すぎる
「どこか行きたいところはあるか?」
「…特には」
トラファルガーと肩を並べ、街を歩く。
何の因果か、二人っきりで。
“じゃあおれ達、荷物もあるし先に戻るから!”
“二人はそのまま楽しんで来てくださーい”
大量の荷物を抱え、笑顔で来た道を戻って行ったベポとシャチ。残された私とトラファルガー。
ただ無言でその場に立つ私に痺れを切らしてか、彼はそう尋ねてきた。だけど私はいつも通り素っ気無く答える。
私が追っている海賊の情報を得るにも、こんな平和な場所では入ってくると思わないし。何より慣れないヒールのせいであまり歩き回りたくも無い。
私も二人と一緒に戻ればよかった。
「戻るか」
そう言ったトラファルガーも、きっと同じで特に行く当ても無いのだろう。静かに踵を返した彼と同様に来た道を戻る事にした。