第5章 そんな優しい言葉は卑怯すぎる
そうして島に下りてみれば、なんだ。やたらニヤニヤしている気持ち悪いシャチと、ウキウキとステップを踏むベポ。
最初はその二人の態度を不思議に思っていたけど、街に着いて漸く分かった。
服屋が並ぶ通りに出た途端、ベポは笑顔で「じゃあどれにしよっかー?」とトラファルガーに渡された財布を片手に、私の腕をどんどん引いて行く。
私は戸惑いながらもベポに連れ回され、それはそれは値段も見ずに、ベポが選ぶ服を片っ端から買い漁った。全部で幾らするのか考えるのが恐ろしいほどに。
最終的には美容室にまで連れて行かれ、オカマっぽい美容師さんに「腕が鳴るわァ」とか言われてされるがままに。
軽く化粧までさせられて、鏡に映った自分が自分じゃないみたいで。
嫌だ、と言っても聞く耳持たないベポに引かれ店を出ると、私の姿を見て呆気に取られる二人が目に入る。こんな格好私じゃなくて、似合わないとでも思っているんだろう。
「すげェ可愛いじゃん!」
私を気遣ってなのか、そう言ってくれたシャチに憎まれ口を叩きながらも、内心は嬉しく思っていた。
それが例え嘘でも、可愛いだなんて言われ慣れていないから。
だけど、私が一番気になってしまったのはトラファルガーの反応。
別に彼にどう思われようと関係ないけど、何故だか胸がそわそわとしてしまう。
その理由は、私には分からないけれど。
そして更に不覚。
“可愛くて仕方ねェよ”
確かにそう言った彼の言葉に、顔を赤らめてしまった事実は拭い切れない。