第5章 そんな優しい言葉は卑怯すぎる
迂闊だった。
自分がまさか、海賊相手に頬を赤らめてしまうなんて、想像もしていなかったから。
半ば無理矢理、まるで着せ替え人形のように色んな服を試着させられた。
それは自分の好みでないものも合わせ。何着買ったのかさえ分からない。
そりゃ、いい加減新しい服は欲しいと思っていた。
だけど、例の件により実質無一文になってしまった私にそんなお金は無く。
どうせ買えないのなら街に出ても虚無感に見舞われるだけ。そう思い、船にいると言ったのだけど。
“おれが買ってやる、来ないなら心臓を潰す”
そう言って部屋を出て行ったトラファルガーの後を渋々ついて行く破目になった。
早々と廊下を歩く彼の背中を見ながら、買ってやるとか言って、またお金を請求されるのではないかと心配になったけど。