第19章 なんてことはない
「銀八」
出ていく寸前、咄嗟に呼び止めた。
「なんだ?」
「…お前はさ、俺との関係、どう思ってたんだ?」
銀八は振り向かなかった。それでも俺は返事を待った。
「…お前からのご祝儀、楽しみにしてるよ」
手をひらひらとさせ、教室から出て行った。
一人取り残され、ゆっくりと、深いため息を吐く。最後の質問は、いただけなかった。これが最後なのだと思うと、つい出てしまった。
始めは酔った勢いでできた関係だった。男同士でリスクもない。後腐れも特にないとズルズル肉体関係を続けていった。
お互いに恋人もおらず、欲を満たすためのお遊びの関係。すがりつく理由などない、その程度の関係。