第19章 なんてことはない
「…式、いつするかもう決まったのか?」
銀八は煙草を一本口に咥え火を付けた。白い煙を口から吐き出しながら頭を振る。
「まだ決めてねぇよ。これから話し合う。まぁ遅くて今年中だな」
「…ふぅん」
それからしばらく沈黙が続いた。教室に漂う煙草の煙が少し目に染みる。
「…なぁ」
「ん?」
俺の呼びかけに銀八が首を傾げる。俺の次の言葉を待つようにジッと見つめてきた。
もし、今までのお前との行為を写真やボイスレコーダーに残していると言ったら、どうする?
もし、俺がお前に対して特別な感情を抱いていると言ったら、お前はこの関係を続けてくれるか?
色んな言葉が胸の中で渦巻く。
それらの言葉はすぐに打ち消され、代わりに違う言葉を口に出した。