第18章 口説き文句
「おかしいな。こう言えばお前が抱き付いてくれると思ったんだが」
「は?」
今度は俺が首を捻る。先程までの歯の浮く口説き文句で、何故そうなると思ったのだろうか。
俺の疑問をくみ取ったかのように、小太郎は持っている本を俺に向けてきた。そこには『外国人から学ぶ愛の言葉』というタイトルが書かれていた。
「この間買ってきた本なんだが、この本によるとこういう台詞を恋人に言えば抱き付いてくれると書いてあったからな」
再度ため息をつく。呆れてしまって出るため息だ。
こいつはどうしてこうも、バカ真面目というか、根が単純というか…こうなってくると単なるバカか。
「…八雲?」
小太郎が首を傾げたまま呼びかけ、俺はフッと笑みを浮かべた。
こいつのバカさ加減に呆れると同時に愛おしくと思うのは、惚れた弱みなんだろう。
「抱き締めて欲しいのか?」
「…まぁ、出来れば」
照れ隠しのようにそっぽを向く小太郎に、俺は条件を出す。