第13章 そういう男
「…なぁ、なんでここ来たかったんだ?お前普段こんな所来ないだろ」
今なら聞けるかと思い、先ほどからずっと気になっていた事を聞いてみる。
すると小太郎は一瞬きょとんとした表情になると、当然のように答えた。
「なんでって、今日はバレンタインだからに決まっているからだろ」
「…え?」
あまりにも堂々としたその言い方に、上手く反応出来なかった。
「せっかくのバレンタインだ。一緒にチョコでも食いたいと思ってな」
彼の答えに一瞬唖然とするも、見る見るうちに顔が熱くなっていく。
そこでようやく思い出した。
長い付き合いで分かった事だ。こいつは恥ずかしげもなくこういう事が出来る。こいつはそういう男だった。
男同士とか、周りの視線とか、そんな事はまったく気にしない。いつだって真っ直ぐな人間なんだ。
だから俺はこいつを好きになったんだ。
チョコを渡すか渡さないかでずっと悩んでいた俺とは大違いだ…。