第10章 告白の言葉
土方は八雲に恋心を抱いていた。
それがいつからなのかは分からない。気付けば彼を見つめ彼を考え、それが恋だと気付くのに時間は掛からなかった。
だがその気持ちを口に出す気はないらしく、今の片思いの関係が続いている。
『好き』だって言うだけの事だってのに、どうもこいつを前にするとダメだ。
今まで何人もの女と付き合ってきたが、そのほとんどが告白されてからの交際であり、自ら誰かを好きになる事は一度もなかった。
告白の経験がない分どうしても好きだと言う勇気がなかった。その上相手は男、何より今の友人関係さえ壊れてしまうのではないかと思うと怖かったからだ。
「そういや総悟結局あれ買ったの?」
「いや、まだ買ってねぇよ。高けぇーし」
沖田の方へと視線を変える彼に土方はホッとする。それと同時にモヤモヤと嫉妬心に近い感情が表れている自分がいる事に気付いた。
俺もいよいよ重症だな。
嘲笑気味に小さく苦笑いを浮かべながら、焼きそばパンを貪った。