第9章 罪人
「……兄等には関係のない事だ。」
冷たく一瞥する。
「ヘコむ訳ゃ無えよな。名門にゃ罪人の血は邪魔なんだからよ。」
今度は更木が絡んでくる。
いつもながら挑戦的な目だ。
「…ほう、貴族の機微が平民に理解できるとは意外だな。」
理解など出来るわけないのだ。
生まれた時より掟に縛られる重圧を。
ふと瑞原の顔が浮かぶ。
そうだ、欲しい女一人、自由にすることも許されない……
「そうでもねえよ。俺ぁ昔っから気が利く方なんだ。どうだ?気が利くついでに、さっきの罪人、処刑より先に俺が首を落としてやろうか!?」
「ほう、知らなかったな。兄程度の腕でも人の首は落とせるのか。」
更木が気色ばむ。
「試してやろうか?」
「試させて欲しいのか?」
二人の視線が絡んで火花が散る。
一触即発の瞬間、市丸と更木の姿が消える。
いや、市丸が更木を縛り上げて抱えて屋根に飛び去ったのだ。
「カンニンしてや、六番隊長さん!少なくともボクはあんたのコト怒らす気は無かってん!ほんなら、妹さんによろしゅう。」
「オイコラ市丸!!放せこらてめえ!!あいつを斬らせろ!!斬らせろっ!!二度と瑞原を気安く呼びつけられないように思い知らせてやる!!」
怒り狂う更木を抱えて市丸が屋根伝いに去っていく。
怒らす気は無かったが、優姫の事は釘を刺しておくということか。
静寂が戻った通路を朽木白夜は自室へ進んでいった。