【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第2章 Sunflower【日向翔陽】
土曜の部活練習は、朝9時から始まり、12時を過ぎてようやく昼休憩に入った。夏の強い日差しが開いた窓から差し込んでくる。
弁当を食べ終わってみんな思い思いにくつろいでいる中、野村先輩は体育館横の扉から足を投げ出して座り、気持ち良さそうに風に吹かれていた。短めに切られた髪が、ふわふわと揺れている。
俺は出来るだけ邪魔をしないように野村先輩の隣に腰掛けた。さり気なく、自然に、平静を装って。でもこんな時、意識すればするほど行動は空回るものなんだ。
「い、い、いい天気ですね…!!」
派手に声が裏返る。
先輩は一瞬キョトンとしたが、すぐに笑顔で答えてくれる。
「そうだね!」
気を遣うのは俺じゃなく、いつも先輩の方だ。2歳しか違わないのに、先輩の方が俺なんかよりもずっと大人みたいで情けなくなる。
私ね、と先輩は視線を外に移して続けた。
「私ね、ヒマワリの花好きなんだ」
先輩が見つめる先には、背の高いヒマワリが何本も空に向かって伸びていた。
「ヒマワリはね、みんな太陽の方に顔を向けて育つんだよ。光を浴びて、まっすぐ育って、大きな花をつけて。でも、どれだけ背伸びをして手を伸ばしても、太陽には絶対届かないの。…私に似てる」
「……えっと…どういう事ですか?」
頭の悪い俺は、先輩が何を言いたいのか分からなかった。先輩はふっとトーンを落として、予想外の質問を投げてきた。
「…日向はさ、好きな人とかいる?」
「へっ…!?」
「あはは、ごめんね。変な質問しちゃった…!」
先輩は困った顔で笑う。
俺は情けないくらいにあたふたとして、なんとか声に出した。
「…い、いる、と思います…たぶん。」
ーーー今、俺の隣に。
先輩は無邪気に笑った。
「あはは、たぶん、って!…でもそうかぁ、日向にも好きな人いるんだね!」
「…そっ、そういう先輩はいるんですか?好きな人」
ーーーこんなこと聞くなんて俺はズルい。