【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第5章 不器用な恋【田中龍之介】
私達は並んで歩き出した。なんて言葉をかけたらいいか分からず、お互いに無言のままよそよそしい空気が漂う。
どうしよう…。
お守りを渡す時に告白するって決めてたのに、タイミングを見失っちゃったな…。
でも、これを逃したらずっと言えない気がする…。伝えるならもう今しかない…!
「…あのさ」
「…あのよ」
覚悟を決めた瞬間、龍之介と同時に口を開いてしまい、私はかなり動揺してしまった。
「ああぁっ、ご、ごめん!」
「なっ、何だよ…!」
「何でもないっ、龍之介からどうぞ…!」
ウォッホン!と大げさな咳払いをして、龍之介は続けた。
「なんつーか…これから先もよ、こうやって応援してくれたら嬉しいし、みなみと一緒に帰ったりとかしたいわけよ」
「な、なによ改まっちゃって…」
「いや、だからよ。予選で勝ち上がって、全国に行ったら…その…また応援に来てくんねーかな、ってよ」
「はぁ…?応援だったらいつもしてるでしょ」
「そーじゃなくて…!!つーか鈍感か、お前っ!!」
私のおでこに、ビシ!と見事なチョップが決まった。
「痛っ!ななな、何すんのよ…!?」
「だから…その…」
「……なによ…?」
「お前が好きなんだよッ!!」
「えっ………!!」
「……みなみはどうなんだよ」
「……わ…私…」
「…」
「私も…ホントに龍之介のスパイクに…その、惚れちゃったかも…」
「えっ…マジか…!」
「う、うん…」
「冗談でした、とか言わないよな…」
「い、言わないわよっ!」
「………ヨッシャーーーー!!!!」
ぷるぷると肩を震わせてうつむいたかと思うと、龍之介はいきなりガッツポーズして、大声で叫んだ。その後も、何度も何度も小さくガッツポーズを続けている。
「ちょ、ちょっと…!あんたムードなさすぎっ!!
…うわわっ!」
突然、私は龍之介に抱きしめられた。
「お前が部活来るって言った時、正直メチャクチャ緊張したんだよ。情けねえとこ見せらんねー、って」
耳元で龍之介の低い声が響く。
混乱して、目が回りそう。
「そ、そうなの…?」
「そんで幻滅されたらカッコ悪いだろーが。んで、告ってもしダメだったら冗談だっつってごまかそうと思ってた…!」
「幻滅なんかしないよ…!か、カッコよかった…!」