【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第5章 不器用な恋【田中龍之介】
二人組の姿が見えなくなってから、私は安心したせいか力が抜けてしまい、よろよろとその場にしゃがみこんだ。
「おいっ、大丈夫かっ!?」
「う、うん…」
「わりぃ、部活ちょっと遅くなっちまって…。こんなトコで待ち合わせした俺が悪かった。立てるか?」
「ん。ありがと…」
差し出してくれた手をとって立ち上がろうとした途端、私はバランスを崩して龍之介の胸に倒れ込んでしまった。
「わわっ…」
「うぉっ」
「ご、ごめんっ…!」
すぐに離れようとしたけど、龍之介の手が私の背中に回る。そのままポンポン、と優しくたたかれ、私は初めて自分が震えていることに気付いた。
伝わってくる龍之介の体温。少しだけ鼓動が速い気がする。
「…落ち着いたか?」
「…う、うん。ありがと…」
そう言って私は身体を離した。顔から火が出そうなくらい熱い。龍之介は気まずそうに咳払いをして続けた。
「あー、その…なんか変な邪魔が入っちまったけど…何だったんだよ、話って」
「あぁ、そうそう…コレを渡そうと思ったの」
そう言って、私は肩にかけたカバンから小さな包みを取り出して、龍之介に差し出す。
「もうすぐでしょ?インターハイの予選。だから、その…勝てるようにお守りを渡そうと思って」
「お…おうっ…!」
龍之介は受け取ったお守りをまじまじと見つめて、恥ずかしそうに笑った。
「サンキューな」
「うん」
「…うっし、じゃあ帰るか!」