【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第5章 不器用な恋【田中龍之介】
龍之介は驚いた顔で私の目を見つめた。視線が合って恥ずかしかったのか、私の頭を無理やり胸に押さえ込む。
「り、龍之介っ…ちょっと苦しいっ…」
「うわっ、スマン!」
身体を離して呼吸を整え、私達は笑い合った。
今まで過ごしてきたよりも、少しだけ近い距離で私たちはまた歩き出した。
お互い無言のまま、コツン、と隣に並んだ手と手が触れ合う。少しだけ間があって、龍之介の手の平が私の手をそっと包み込んだ。
ゴツゴツとして不器用な手だけど、すごく優しくて温かい。
「美人のマネージャーさん…潔子さん、だっけ?龍之介はあんな感じの人がいいんだと思ってた」
「分かってねぇなぁ…潔子さんはな、誰の手も届かない、汚れなき至高の存在だからこそいいんだよ…!!誰だって女神とは結婚できねーだろ?」
「はぁ…」
何その理論…。
「試合、応援に行くから頑張ってね」
「おう、任せとけ!ますます俺に惚れても知んねーからな」
「調子に乗るな!」
静かな帰り道に私達の笑い声が響いた。
fin