【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第5章 不器用な恋【田中龍之介】
そんなまさか、幼稚園からずっと一緒だった幼なじみに、今更恋なんてするわけないじゃん!…と、ここ一ヶ月、何度も自分に言い聞かせたけど、やっぱり気のせいじゃないらしい。
それ以来、私は龍之介とまともに目を合わせられなくなっていた。
龍之介も私の様子がおかしいと気付いたのか、あまり自分から話しかけてこなくなっていた。
こんなんじゃダメだ…!
だから今日、私は思い切って告白することに決めた。
勝利祈願のお守りと一緒に。
待ち合わせ場所は渡り廊下の自販機の前。
お互い部活が終わったらそこで合流することにした。
時刻は午後七時過ぎ。すっかり日は暮れて、空には星がキラキラと輝いている。
龍之介はまだ来ていない。第二体育館の明かりは消えていたから、今頃部室で着替えているのかもしれない。
そわそわする心を落ち着けようと自販機の前をウロウロしていると、暗闇の向こうから知らない声がした。
「おっ、女子がいる!」
「なぁなぁ、君一人?」
背の高い男子二人組。どちらも知らない顔だ。
私との距離を遠慮なく詰めてくる。思わず後ずさると、背中がドンと自販機に当たった。
「な、何ですか…!」
「オレらこれからカラオケ行くんだけどさぁ、君も付き合ってよ」
「い、行きません…!」
「いいじゃんいいじゃん!女子がいた方が盛り上がるっしょ?」
そう言って、一人が私の腕を掴む。振り払おうとするけど、力が出ない。
「ちょっと、離してっ…!」
どうしよう、怖い…!誰か来て…!!
「ソイツに何か用っすか」
その時、数メートル先から聞き慣れた声が飛んできた。
「龍之介っ…!!」
「…はぁ?何なのお前。このコは俺らと遊びたいんだってよ」
「ホラ、行こうぜ」
そのまま無理やり引っ張られそうになって、私は必死で抵抗した。
「痛っ…!や、ヤダ…!」
「オイ」
龍之介の手が、男子生徒の肩を掴む。
「コイツに手ぇ出したらブッ潰す」
今まで見たことも聞いたこともない龍之介の形相と声に、私は身がすくんでしまう。それは私の腕を掴んでいた男子生徒二人も同じだったようだ。
バツが悪そうに目を逸らして、すぐに私の腕を放した。
「……なんだよ、男持ちかよ」
「…行こーぜ」