【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第5章 不器用な恋【田中龍之介】
…ところが、だ。
本格的な練習が始まり、二手に分かれてチーム戦になった時、私の目は龍之介に釘付けになった。
試合開始のホイッスルが鳴った瞬間、見たことのない真剣な目つきに変わる。
身体をしならせて高くジャンプし、そこから繰り出される綺麗なフォームのスパイク。
あんなのまともに受けたら、私なんか簡単にふっ飛ばされそう…。
手がかかって鬱陶しい幼なじみにしか思ってなかったけど、バレーをしている龍之介は男らしくて頼もしくて、認めたくないけどちょっとカッコいい、なんて思ってしまう。
背中だって、いつもよりずっと大きく見えた。
あれ…なんだろう…。すごくドキドキする。
気付いた時には、私はその姿を目で追っていた。龍之介が得点を決めるたび、私も声を上げて喜んだ。
試合終了のホイッスルが鳴る。
勝ったのは龍之介のいるチーム。
「やったーーー!!」
私が立ち上がってガッツポーズをしているのに気付き、龍之介はこちらを見てニカッと笑った。拳を突き出して言い放つ。
「見たか!俺の華麗な超絶スパイク!!惚れただろ!」
「バーカ!惚れませんよーだ!」
そう言って舌を出してごまかしたけど、きっとこの時の私は、顔が真っ赤だったに違いない。
…すごく、すごく、とんでもなく悔しいことに、私はこの瞬間から龍之介のことが好きになってしまったのだ。