【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第4章 Sunflower =another=【澤村大地】
バン!と勢いよく扉を開けて更衣室へ逃げ込むと、驚いた顔の潔子が立っていた。時間も遅いし誰もいないだろうと思っていたのに。
「き、潔子…!」
気まずくなって、私は目を伏せる。
「みなみ、澤村と帰ったんじゃなかったの…?」
「あぁ…ううん、もういいんだ…」
私はロッカーを背にしてズルズルと床にしゃがみ込んだ。膝をギュッと胸に引き寄せ、顔を伏せる。
馬鹿みたい。最初から大地が私を選ばない事なんて分かってるじゃん。それなのに変な期待して、ドキドキして、もしかしたら気付いてくれるかな、なんて思ってた。
涙がポロポロと溢れる。私は声を漏らさないよう肩を震わせて泣いた。潔子は黙ったまま私の隣に座り、ただ頭を撫でてくれた。
静寂の中、私のしゃくりあげる音だけが響く。二人ともしばらく無言のまま時間が過ぎていく。
「…みなみはさ」
長い沈黙の後、潔子が口を開いた。
「なんで澤村に言わないの?自分の気持ち」
潔子は鋭い。こういう時、何も説明しなくても、大体何があったのかを分かってる。
すぅ、と息を吸って少し落ち着いたところで、私は答えた。
「…大地には好きな人がいて、それが私の大好きな友達で、その子も大地のことが好きだから…」
「…うん」
「中学の時から、ずっとそうだった。見てて分かるもん。…だから、私の入り込む隙間なんてないんだ」
「…うん」
「…大地のことも、その子のこともすごく好きだし、大事なの。だから、私が今さら気持ちを伝えて、お互いギクシャクするのはヤダ。…でも、大地のこと諦めようと思っても無理なんだもん。自分でもどうしたらいいか分かんない…」
「…うん」
潔子は黙ってただ話を聞いていたけど、何か言いかけたところで、突然ドアの向こうから見回りの先生の声がした。
「誰かいるの?もう下校の時間、とっくに過ぎてるわよ!」
「あっ、す、すみません…!!」
私は慌てて涙を拭い、荷物をまとめ、二人して足早に外に出た。