【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第4章 Sunflower =another=【澤村大地】
外に出ると、いつの間にやんだのか雨は上がっていた。涼しい風が吹いて雲が流れ、星空まで見える。
私達は黙ったまま並んで歩いた。
「…みなみを見てると辛い」
ポツリと潔子が呟く。
一つ一つ丁寧に、言葉を紡ぐように続ける。
「行き場のない気持ちなら、やっぱり伝えるべきだと思う」
「だって…大地の中にある私の居場所は、マネージャーっていうポジションしかないんだもん。もし私がそれを伝えてギクシャクしちゃったら、部活にも行きづらくなっちゃうし…」
でも、ホントは私だって気付いてる。
情けない言い訳をしながら、自分が逃げてるだけだってこと。
「…澤村のこと、もっと信じてあげてもいいんじゃない?」
「え…?」
突然潔子は立ち止まって、私を真っ直ぐ見つめた。
「確かに、澤村は鈍感だし、女心に疎そうだし、流行にも乗り遅れるタイプだし、バレー馬鹿だし、不器用だしーーー」
「……き、潔子…?」
「怒ると怖いし、たまに腹黒いし、部活やめたら太りそうだけどーーー」
「………」
潔子の口からは、ズラズラと大地の悪口が留まることなく溢れ出る。
潔子が誰かを冷たくあしらうのは今までたくさん見てきたけど、こんな辛辣な連続攻撃は初めて見たかも…。
呆気にとられた私は、しばらくポカンとしていた。
「でも、誰かの気持ちは、逃げずにちゃんとどっしり受け止めてくれる人だと思う」
最後は真剣な眼差しで的を得たことを言うから、私は思わず笑ってしまった。
「……ふははっ」
「なっ、なんで笑うの…!?」
潔子は珍しく顔を赤くして戸惑っている。
「ご、ごめん…潔子があんまりにもヒドイこと言うから…可笑しくって…!でも、大地ホンットに鈍いし、乙女心は分かんないし、流行にも疎いし、怖いんだもん…!!」
お腹を抱えて笑う私を見て安心したのか、潔子はホッとした様子で笑った。
「…ふふ、お父さんだからね、烏野の!」
「その通りだね!」