【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第4章 Sunflower =another=【澤村大地】
烏養コーチの指導のもとで練習は進み、19時を回ったところでその日の部活は終了した。部員たちは、各々モップをかけたり散らばったボールを拾ったりと、片付けに取り掛かっている。
「大地!今日もお疲れ様!」
私は、一人黙々とノートをとっている大地に声をかけた。
「おう、野村もお疲れ!」
そう言ってニッと笑う。額に汗の粒が浮かんでいる。
「これ、大地のタオルでしょ?ちゃんと汗拭かないと風邪引くよ」
「あぁっ、スマン」
大地は私からタオルを受け取り、ゴシゴシと汗を拭う。私はその仕草をドキドキしながら見つめた。
大地の筋肉質な腕とか、ガッシリした肩とか、広い背中とか。いつから好きになったんだろう。
低いけど優しい声、真っ直ぐな瞳、意外と綺麗な指先。私はいつもドキドキして、その手に触れたくて、触れてほしくて…。
でも大地はそんな私のことなんか、全然、これっぽっちも、気づいていないんだってこと。
そして、大地が見ているのは私じゃなくて、私の友達なんだってこと。
あ、やばい…。私また弱気になってる。
その時、開いた扉から湿気を含んだ冷たい空気が入ってきた。同時にザーッと激しい音をたてて雨が降り出す。
「わ、雨降ってきた…!」
「あぁ、そういえば今夜降るって言ってたもんなぁ…」
大地が空を見上げて言った。
「わぁ…どうしよ、傘忘れちゃった…」
「え、マジか…!」
大地は「うーん」と唸って、私を見つめる。
「…仕方ない、送ってくよ。どうせ帰り道一緒だろ?」
「えっ、いいの?」
「この時期に風邪引いてもらっちゃ困るしな!」
「あ、ありがとう…!」
顔が熱を帯びていくのを感じる。大地のことだから、下心なんて1ミリもないんだって分かってる。でも、その心遣いが飛び上がりたくなるくらい嬉しかった。
「とりあえず片付け終わって着替えたら合流な。下駄箱のところで待ってて」
「うん、分かった!」