【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第3章 Time goes by【菅原孝支】
ペラリ、と一枚のプリントを手渡される。部活動と顧問教師の一覧の中に、俺は自分の名前と“バレー部(男子)”という文字が並んでいるのを見つけた。
「菅原先生には男子バレー部の副顧問をお願いすることになりまして…。私は女子の方の副顧問なので、体育館割を渡しに来ました」
「あ、あぁ…わざわざありがとうございます。よろしくお願いします」
俺はペコリと頭を下げる。俺が元バレー部だと知っていて、誰かが担当に推薦したのかもしれない。今度は自分が指導する立場だなんて、なんだか変な気分だ。
「…とりあえず今月分はもう決まっていますので、菅原先生にもお渡ししておきますね」
そう言ってみなみがもう一枚のプリントを差し出そうとしたところで、あっ、と小さく声を上げた。慌ててその手を引っ込める。
「ご、ごめん…!間違えて先月分のを持ってきちゃった…!」
「へ…?」
「あ…!も、持ってきてしまいました…!」
わざわざ敬語に言い直すあたりがみなみらしい。真面目なのに抜けているところは変わってなくて、ひょうし抜けした俺は思わず吹き出してしまった。
「な、なんで笑うんですかっ…!!」
「はははは、いや…だって…真面目にしててもドジなところは全然変わってないからさ…!」
「もうっ…」
みなみは耳まで真っ赤にしてそっぽを向く。
「ま、また昼休みに持ってきますから…!」
「いーべいーべ、気にすんな!」
そう言って髪を撫でようとしたが、俺は上げかけた腕をさり気なくまた降ろした。ここは学校だし、俺たちはもうそんな関係じゃないんだ。
でも左手の薬指に指輪がないことを確認して少しホッとしているあたり、俺はまだみなみのことを諦めきれずにいるのかもしれない。
コホン、と咳払いをしてみなみは話を引き戻す。
「とにかく、毎月の体育館割はいつも副顧問で決めることになっています。来月からは菅原先生もお願いしますね」
「はい、こちらこそお願いします」
「で、では失礼します…!」
そそくさと戻るみなみの後ろ姿。少し大人っぽくなっていたけど、身体の細さも素直なところも変わっていなくて、俺はなんとなく安心してしまったんだ。