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【ハイキュー!!短編集】Step by Step!

第3章 Time goes by【菅原孝支】


廊下の色も、窓から見える景色も、教室の風景も、何度も見てきたものだ。
生徒として通っていた高校に教師として赴任するなんて、なんだか不思議な気持ちになる。

職員室の扉を開け、自分のデスクを確認する。どうやら国語教師のみなみと体育教師の俺とでは、割り振られた部屋が違うらしい。残念なような、少しホッとしたような、複雑な気分だ。
俺は持ってきた教科書を整理し、プリントやファイル類を引き出しにしまう。一通り身の回りが片付いたところで、入り口近くに座っていた教師に声をかけられた。

「菅原先生、部活動のことで呼ばれていますよ」

「あ、はい、分かりました」

案内されて廊下に出ると、そこにはポツンと立っている女性の後ろ姿があった。俺はこの背中をよく知っている。
くるりと振り返ると、彼女ーーー野村みなみは真っ直ぐ俺の目を見つめた。

「あ…」

みなみが小さく息を呑んだ。
最後に会ったのは二年半くらい前だろうか。心の準備が全くできていなかった俺は、「あの」とか「えっと」とか口ごもった末に、ひどくありきたりな挨拶をしてしまった。

「……久しぶり」

「…う、うん、お久しぶりです」

後ろでまとめられた長い髪と、かすかに薫る甘い香り。きっちりと着こなされたスーツ姿。見慣れない大人っぽい装いに、俺は思わずドキリとしてしまう。
みなみはふっと目線を落とし、気恥ずかしそうに口を開いた。

「…菅原先生が烏野に赴任すると聞いて、驚きました」

「あぁ、俺も…。懐かしくって、さっき体育館を覗いてしまいました…」

ギクシャク、と音が聞こえそうな会話。
みなみは気を遣ったのか、ワントーン明るい声で続けた。

「えっと…早速で申し訳ないのですが、実は部活動のことでお話がありまして…。これ、顧問割です」



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