第2章 ツノルオモイ
2ヶ月後、優雨と翠月が次々と村人を殺しているという情報は、あっという間に村中に広まった。
「狐神様…何故妖狐を産むようなことを…」
「しかも二人も…」
この日、狐神である優雨の両親の元へ村人が訪れていた。優雨の母親が言った。
「…気づいた時にはもう遅かった。私達も妖狐を身ごもることは望んでいなかったの」
そして父親も続けた。
「あの子達はもう、私達の子ではない。殺すなりなんなりすればいい。私達も協力しよう」
「…」
━妖狐…か…━
優雨と翠月はこの話を隠れて聞いていた。
だがもう、限界だった。
ガラッ
扉が勢い良く開いた。
「…」
「…」
「「「!!!」」」
二人の目にはもう、光はなかった。
憎しみと怒りしか湧いてこない。
「要らない子なら産まなきゃよかったじゃない」
翠月の憎しみに満ちたその目は、人々を更なる恐怖へと追いやった。
「黙りなさい。私達だって産みたくなかったわ。お前たちみたいな醜い子供」
「…」
シャッ…
優雨の鋭いツメが母親の頬を切り裂いた。
「きゃあああああああ」
傷口から血が溢れる。
「この化け狐!!!!!!!!」
「狐巫女様…どうか…どうかお助けください…」
「…」
ボッ…
翠月がマッチに火をつけた。
悲鳴をあげる村人などには目もくれず、
「全部消えてしまえばいい」
ボォォォォォ…………
火のついたマッチを投げると同時に、家の中は炎につつまれ、あたり一面に火が燃え移った。
村人達は逃げ出し、狐神である両親も
また、村人達と一緒に逃げ出した。
人々は代々受け継がれてきた狐神の屋敷の火を、なんとかして消そうと消火活動に励むがその努力も虚しく、屋敷は全焼した。
この火事で、何人かの村人が死んだ。
優雨と翠月はうっすらと笑顔を浮かべがらその場をあとにした。