第1章 キラワレモノ
「…まずは一人目…」
血に染まったナイフをしまい、黒髪の青年は静かに呟いた。
なにも思わない。何も感じない。
嫌いなやつを殺してなにが悪い。
あいつらは俺を
殺そうとしたんだ。
4月、一人の青年がとある高校に入学した。
「…」
入学式が終わり、HR(ホームルーム)が始まった。教室が賑わっている中、青年は教室の隅で静かに読書をしていた。
「はい!静かに!今日から一年間、このクラスの担任になりました、橘 宏美(たちばな ひろみ)です」
クラスが一斉に注目した。
若くて美人な先生と言っていいだろう。
眼鏡が似合うその先生は、更に続けた。
「とりあえず窓際の席から自己紹介してください」
(俺からか…)
青年は立ち上がり、無表情で淡々と自己紹介を始めた。
「古神 優雨(こがみ ゆう)。趣味とかは別にないし、好きな食べ物とか嫌いなものとか、別に無い。友達も要らねぇから、よっぽどの事がない限り話しかけんなよ?鬱陶(うっとう)しいから」
教室がざわめいた。
━友達はいらない。そんなもの無駄だ━
「…」
そして全員の自己紹介が終わった。
「なぁ古神!お前どこ中?」
「……話しかけんなっつったよな?」
優雨は話しかけてきたクラスメイトを睨んだ。
その瞳には光はなく、まるで荒れ狂う
獣のようだった。
「は?(なんだよこいつ…せっかくオレが話しかけてやってんのに)」
「…」
余計なことをするなとばかりに優雨は立ち上がり、席を立った。
「ねぇ古神君、ちょっといい?」
「お前も話聞いてねぇのか。話しかけんなっつってんだろ」
「いいから」
何故かその女子だけは、しつこく話しかけてきた。
優雨は仕方なく廊下へ。
その女子は、まっすぐな目で優雨に言った。