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狐神~キツネガミ~

第3章 ネムリギツネ


どれだけの年月が流れただろうか。

玲奈は自らの部屋で、なにか考え事をするように窓の外を見つめていた。

「…」

コンコンと2回、玲奈の部屋のドアをノックする音が聞こえる。

「俺だ、入るぞ」

突然の来客者。目を合わせようともせず、玲奈はただ窓から外を見下ろしていた。

「どうした?」

来客者である蓮は、いつもと様子がおかしい玲奈に問いただした。

「ちょっと嫌な予感がする」

「嫌な予感?」

玲奈はコクリと頷き、まぁ気のせいだとは思うけどと付け足した。

「なんか腑に落ちないのよ」

「まだ言ってんのか?あれから何年たったと思ってんだよ」

あれから数年は過ぎている。
今更どうこう言ってもなんの意味もないが、玲奈は何かがおかしいというのだ。

「あのとき、確かに手応えはあった。でも炎がある程度鎮火した時、あの場所に2人の死体は無かったのよ」

「死体が消えたっつーのかよ?」

玲奈が妖狐に火を放ったあの後、もう一度あの場所に行っていた。
しかし燃えた後はあるものの、妖狐の死体とおぼしき姿が発見されなかったのだ。

"2人は本当に死んだのか?"

「でも生きてるならとっくに私達を殺しにきてるはず、それなのに来ないっていうことはやっぱり…」

蓮と同居して約2年が過ぎようとしている。

村人達は既に、妖狐の存在など忘れていた。

(この感じ…あのときの…)

「ま、嫌な予感だかなんだか知らねーが、今この村は平和なんだ、難しいこと考えんなって」

蓮は笑顔でそう言った。まるで自らの不安をかき消す様に

(とはいえ、確かになにか変な胸騒ぎがする…何も無いといいんだが…)

「とりあえず念のため、あんたもこれ持ってなさい」

玲奈が蓮に渡したのは小さなまが玉のようなものだった。

「これは?」

「狐巫女が身を守るお守りとして持ってた石よ。あんたも持ってるといいわ」

「ありがたく貰っとくわ」

蓮はその石をポケットにしまった。
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